懐かしのゲーム紹介『ファミコン探偵倶楽部 PARTⅡ うしろに立つ少女』ディスク
ファミコン探偵倶楽部 PARTⅡ うしろに立つ少女
『ファミコン探偵倶楽部 PARTⅡ うしろに立つ少女』は1989年5月23日に
任天堂よりファミリーコンピュータ ディスクシステム専用ソフトとして発売されたテキストコマンド式アドベンチャーゲーム。
キャッチコピーは「恐 怖 、 直 撃 。」
前作の消えた後継者より1年後の発売となった。
時系列としては前作より3年前のストーリーとなる。
プロデューサーは前作に引き続き、横井軍平。
今作も前作同様、前編・後編と2部作となっており後編は1989年6月30日に発売された。
「うしろの少女」の謎
「うしろの少女」の話は、「金田事件」で行方不明となった丑美津高校の生徒、浅川しのぶが噂の元になっています。
洋子は、「私のうしろに少女がたっている」という不思議な夢を母親に話して死んでいます。
このことがきっかけとなって、主人公は「うしろの少女」の調査を始めます。
「金田事件」の謎
15年前に起きた金田源治郎(かねだげんじろう)の殺人事件は、犯人が明らかになっていません。
当時、容疑者だった内田輝彦(うちだてるひこ)は自殺しています。
この殺人事件の時効が迫っており、空木探偵が事件を捜査しています。
あやしい用務員
事件の調査が進むと、金田源治郎殺しの容疑者が用務員の田崎であること、田崎のアリバイを校長の浦部が証言していること
そのアリバイを崩す証言があること、などが明らかになります。
しかし、田崎は、金田と洋子の殺しの犯人ではありません。嘘のアリバイ証言をした浦部校長を守るため、ほんとうのことを話していませんでした。
学校をうろつく男
浦部校長と一緒にいた男は、金田事件で殺された源治郎の息子である金田五郎です。
五郎は、浦部を強請っていました。
うしろに立つ少女の噂を広めた人物
葉山久子(はやまひさこ)という教師が「うしろに立つ少女」の噂を広めていました。
葉山は丑美津高校の卒業生であり、金田が殺された直後に、学校にいました。
そして、葉山はセーラー服を着た「うしろに立つ少女」を目撃します。
犯人
浦部校長は、金田源治郎、五郎、小島洋子の殺害の罪を自供するような遺書を残し自殺します。
しかし、浦部校長は犯人ではなく、真犯人は洋子の担任の日比野達也(ひびのたつや)です。
源治郎殺し
当時、高校生だった達也(内田達也)は、父親の輝彦が源治郎に騙されたことを恨み、源治郎を殺害します。
この時の姿を、達也は、浅川しのぶに目撃されます。
しのぶ殺し
殺人を目撃したしのぶは、その場から立ち去ります。しかし、浦部の運転していた車にはねられます。
浦部は、達也から電話で、達也の犯行を知り、殺人現場に車で向かっていました。
車にはねられたとき、しのぶはまだ死んでいませんでした。そのため、浦部が学校へしのぶと達也を連れて行ったあと、息を吹き返しました。
このときの姿が「うしろに立つ少女」の幽霊です。なお、しのぶは、達也によって殴り殺されます。
洋子殺し
洋子は、日比野に殺されます。日比野の殺人に気付いた洋子は、日比野を問い詰め、殺されてしまいます。
洋子の死体を川に投げ捨てたのは、校長の浦部です。浦部は罪を被るつもりでした。
五郎殺し
源治郎の息子である五郎を殺したのも日比野です。
金がなくなってきた五郎は、源治郎殺害の時にみかけた黒い車(浦部の車)をネタに、浦部を強請ります。
それを知った達也が激昂し、五郎を殺害します。
しのぶの死体の隠し場所
しのぶの死体は、学校の鏡の裏にありました。洋子があゆみに言った「うしろ」というのは、鏡に映ったあゆみの後ろ、という意味でした。
イニシャルの真相
五郎の殺人現場に残されていた万年筆には、T.Uというイニシャルが掘られていました。
これは、日比野達也のものであり、浦部が彼に送ったプレゼントでした。
ストーリー
夜一人で学校にいると、後ろから誰かの呼ぶ声がする。振り返ると、そこには血染めの少女が立っている──。
3年前のある日の夜、主人公は2人の警官に追われていた。
夜中にうろついていると思われる未成年の少年である主人公を尋問しようとしていたのだ。
しかしそこで主人公は空木俊介という探偵に出会い、空木に助けられた。
主人公は、行方不明となっていた両親を探すべく単身飛び出し、空木いわく「もっか家出中」だったのである。
話し合った結果、主人公は両親を見つける手がかりにもなるのではと考え、空木の元に身を寄せ空木の助手として働く事となった。
そして数ヵ月後のある日の朝、空木探偵事務所に鳴り響く1本の電話のベルが、恐怖の事件の幕開けを告げた…。
河原で発見された女子高生の死体の調査を依頼された主人公は鋭い洞察力により首に残された跡から絞殺であることを発見する。
遺体発見現場付近で発見された生徒手帳によると、少女は丑美津高校に通う1年生、小島洋子であると判明する。
現場には少女の同級生である橘あゆみと、担任の日比野達也が訪れていた。
あゆみの話によると、洋子はあゆみとともに探偵クラブというサークルを結成していたという。
洋子の母親の証言や学校内での調査により、洋子は丑美津高校に纏わる怪談『うしろの少女』について調査していた事が発覚する。
『うしろの少女』とは、『夜一人で学校にいると、後ろから誰かの呼ぶ声がする。
振り返ると、そこには血染めの少女が立っている』という内容だった。
美術教師の駒田によると、15年前の11月に同校の浅川しのぶという女生徒が行方不明になった頃から語り始められたとされる。
15年前の少女失踪事件と、今回の女子高生殺人事件。
関係がないように思えた二つの事件は、やがて複雑に絡み合い、関係者を恐怖の底に陥れてゆく…
伝承から都市伝説へ
『ファミコン探偵倶楽部シリーズ』は事件に関連して怪談が結び付けられている点が特徴である。
前作『消えた後継者』は都心から離れた田舎で起こる殺人事件。そしてその村に伝わる伝承、「死人蘇り伝説」が事件の鍵となっていた。
それに対し、今作「うしろに立つ少女」では舞台は都会に移り変わり、学校に纏わる怪談話「うしろの立つ少女」が大きく物語に関わってくる。
ホラーテイストなシナリオはそのままに、現代風の都会、それも学校が舞台なので
必然的に登場人物は生徒や先生など子供達にとっては身近な存在である者が多くなった。
そのためファミっ子達は物語をよりリアルに感じることができ、恐怖は前作以上となった。
洗練されたシナリオ
前作の”記憶喪失の主人公”が徐々に記憶を取り戻しながら捜査を進め、クライマックスでは自分の生い立ちが
連続殺人事件に大きく関わっていることがわかるというシナリオはゲーマー達の間で賞賛の嵐であった。
今回は現在に起こった女子高生殺人事件と、15年前に同じ高校に通っていて行方不明になり
未だに消息がつかめずにいる時効寸前の女子高生失踪事件という
全く別である二つの事件が、その高校に伝わる「うしろに立つ少女」の怪談を軸に複雑に絡み合ってゆく。
そして捜査を進めるうちに主人公はこの二つの事件を同時に読み解いていくことになるデュアルストーリー形式のシナリオとなっている。
探偵物語として絶賛することを禁じ得ない濃厚なミステリーアドベンチャーに仕上がっている。
物語を盛り上げるBGM
本シリーズはその素晴らしいBGMにも定評がある。
前作『消えた後継者』は外注であったが、今作『うしろに立つ少女』は任天堂のゲームミュージック担当の作曲家・山本健誌が担当している。
前作に負けずとも劣らないBGMは全楽曲渾身の出来となっており
特にオープニング曲である「うしろに立つ少女」の身の毛もよだつ旋律は、それでいて何処か儚げで、まるで殺害された女子高生の鎮魂歌のように聴こえる。
この曲は数ある歴代のゲームミュージックの中でもトップクラスの名曲であると断言できる。
前作を上回る恐怖演出(ネタバレ注意)
ゲーム中の随所に盛り込まれた演出は、プレイヤーの恐怖心を煽り、物語を数段恐ろしいものに格上げしている。
その中でも特筆すべきは、クライマックスでのこのシーンであろう。
校長の浦部が自白の遺書を残し自殺体として発見された夜の校長室…本当の父のように慕っていた日比野が肩を震わせる…
浦部が犯人であれば確かに今までの事件の謎は全て解決だったため、プレイヤーは物語の悲しい結末に感動しながらも
「これでこの事件も解決、ゲームもエンディングか」と思っていた。
息子同然で接してくれた浦部の変わり果てた姿に涙しながら「嘘だ」と叫ぶ心優しい日比野先生に同情すらしたものだ。
しかしその直後…!
突如流れるメインテーマ「うしろに立つ少女」のBGMと共に豹変しナイフを突きつける日比野!
まさかの真犯人の登場による大どんでん返しに全てのプレイヤーは悲鳴を上げる!
深夜の校舎、廊下の行き止まりに追い詰められる主人公とあゆみ。
徐々に近づいてくる日比野…。
とうとう追いつき、ナイフを振り上げ主人公に切りつける!
間一髪そのナイフを交わした主人公!
ナイフは廊下の行き止まりにある鏡に突き立てられる。
振り向き、再度襲いかかろうとしたその時…ッ!!
鏡の中から出てきた白骨死体は15年前の失踪した少女であった!
驚愕の出来事に気を失う日比野。
主人公は駆けつけた警官と空木先生にその場を任せ、あゆみを抱きかかえ、おぞましい現場を離れる…。
そして物語は後日談を挟みエンディングへと流れる。
そしてエンディングが終わると…
本作より3年後に起こる連続殺人事件”前作”『消えた後継者』の幕開けにてゲームは終了する。
浦部の自殺体の発見からクライマックス、エンディング、そして『消えた後継者』へと続く演出。
全てにおいて完璧で、まさに息をするのも忘れさせるくらいにプレイヤーをゲームの中へと引きずり込む。
本作『うしろに立つ少女』のクライマックスは”忘れられないゲームシーン”の上位に挙げるレトロゲーマーが多く、今でも伝説の演出とされている。