究極のネタバレ?『ドラゴンクエスト』のパッケージについて
ファミコン版の初代『ドラゴンクエスト』の
パッケージの絵を見たことない人はほとんどいないのではないでしょうか。
少なくとも、今、あなたは見たはずである。竜王と対峙する勇者の姿。
この臨場感あふれる構図は、今、まさに新しい伝説が生まれようと
している瞬間なのだ。しかしこのパッケージ絵はその構図ゆえ
しばしば「ネタバレだ」と揶揄され嘲笑されてきたのだった。
考えてみてほしい。終盤にしか出て来ないラスボスであるはずの
竜王の姿を、しかも最もサプライズ性が高いはずの変身後の姿を
まだゲームをやっていない人間が見てしまうであろうパッケージの絵に
こんなにも堂々と描いてしまっているのだから、、、
これがネタバレでなかったら何なのだ。なんて思ってしまうのは
これがネタバレでなかったら何なのだ。なんて思ってしまうのは
無理もない話。しかしながら、初代『ドラクエ』のパケ絵は
厳密な意味でいうネタバレではないと言ったら、あなたは驚くだろうか。
簡単な理屈である。まず、このパケ絵がネタバレだと
簡単な理屈である。まず、このパケ絵がネタバレだと
思ってしまう条件として、この竜のキャラクターが
変身後の竜王であることを知ってなければならないのだが
変身後の竜王であることを知っている時点で、もはやこのパケ絵を
見たところでネタバレにはならないのだ。そういう意味でいえば
このパケ絵はどちらかといえば世の中で「伏線」と呼ばれている概念に近いのだろう。
このパケ絵に「ほのめかしている」という言葉が当てはまるか
どうかはともかく、少なくともネタバレではないことは確かである。
それどころか、もし、あなたがいまだに初代『ドラクエ』を
それどころか、もし、あなたがいまだに初代『ドラクエ』を
未プレイだとして、これから冒険をすすめていったとしても
残念ながら、この先このパケ絵のような状況を迎えることは
絶対にないと断言できる。以下に理由を挙げていこう。
◆勇者が持っている剣の謎◆
まずは勇者が握っている剣である。あなたの冒険が順当にすすめば
初代ドラクエの勇者は最終的に「ロトのつるぎ」を装備しているだろう。
いや正直に言って欲しい。あなたの勇者はロトのつるぎで竜王に挑んだはずだ
しかし鍔(つば)の部分に注目すると、それが伝承されているロトの剣の
デザインとはかけ離れた形であることがわかるのだ。
たまたま違う剣で戦ったのか、それとも戦闘中に折れて持ち替えたのかもしれないが
残念ながらこの勇者が持っている剣はデザイン的に、初代『ドラクエ』で
2番目に攻撃力の高い「ほのおのつるぎ」でもなさそうなのである。
せいぜい「はがねのつるぎ」といったところか。はたして、世界の命運が
かかっているこの大一番に、縛りプレイをするふざけた勇者など居るのだろうか。
(あるいは居たとしておめおめとパケ絵になるだろうか)
勿論、この剣が「じつはロトの剣だったのです!」なんて展開もあるかもしれないが、、、
勿論、この剣が「じつはロトの剣だったのです!」なんて展開もあるかもしれないが、、、
初代ドラクエより時系列的には前の出来事とされる『3』において
ロトの剣の定義は「勇者がラスボスを倒したときに持っていた剣」ということになってる。
ロトの剣の定義は「勇者がラスボスを倒したときに持っていた剣」ということになってる。
たとえば、それがたまたま「はがねのつるぎ」だっとしよう。しかしそれでも
『1』の時代になる頃には、おそらく後世の腕のいい鍛冶職人が打ち直しており
どのような世界線をたどってもこの有名な意匠を凝らしたデザインになっている
というのが通説なのである。つまりそもそも『1』の時点は、ロトのつるぎが
『3』から伝承されたあとなのだ。したがって、この勇者が持っている剣が
「ロトのつるぎ」である確率は限りなくゼロに近いため
極めて不自然な状況であると指摘せざるを得ないのである。
◆戦っている場所の謎◆
次に、勇者と竜王が戦っている場所である。よく思い出してほしいのだが
あなたの勇者がやっとの思いで竜王を見つけ出し、対峙したとき
彼はどこに居ただろうか。それは竜王城という建物のなかではなかったか。
あなたの勇者は玉座にすわる竜王から
あなたの勇者は玉座にすわる竜王から
「味方になれば世界の半分をやろう」とそそのかされていたではないか。
ドラクエ世界の建物には屋根がないからもともと屋外みたいなもんじゃん
なんて小学生みたいなことは言わないでほしい。(あなたが小学生だったらその限りでない)
しかしパケ絵ではどう見ても屋外で相まみえているのである。
しかしパケ絵ではどう見ても屋外で相まみえているのである。
戦闘がエキサイトしてしまい城の壁をぶち破り、お互い外へ
躍り出てしまった可能性もあるが、それはバトル漫画において
多人数vs多人数だった戦いが、いつの間にかそれぞれ都合よく
タイマンになって場所も変わってるという、そもそも多人数バトルを
描く力量のない漫画家が成り行きで多人数バトルになってしまったときに
よくやる手法であって、竜王vs勇者は最初からタイマンなのだ。
壁をぶち破る必要性など微塵もないのである。
あるいは、ぶち破ったのではなく、お互い同意の上で普通に
あるいは、ぶち破ったのではなく、お互い同意の上で普通に
ドアから屋外へ出たかもしれない。しかし世界の命運がかかっている戦いに
「外でやりますか」「いいですな」「では勇者さんお先にどうぞ」なんて
緊張感の無いやりとりがあったとは思えないのだ。だったらいっその
ことドリフのように、戦いが始まった瞬間、周囲の壁がドーンと倒れて
しまったほうが何倍かマシである。しかしいくらなんでも
長い間、竜王vs勇者だと思っていたこの構図が、よく見たら
いかりや長介vs志村けんだったなんてことはあるまい。
勇者、うしろ!うしろ!言うてる場合か。
◆竜王の指の数の謎◆
そして、もっとも不可解なのは竜王の指の数である。
よく思い出してほしい。あなたの勇者が出会った竜王は何本指
だったのかを。ラスボスの指の数などいちいち憶えてないかもしれないが
あの「ダ~ブルパチンコ!」のポーズを忘れたとは言わせない。
そう、3本指だったではないか。しかし初代『ドラクエ』の
パケ絵に描かれている竜王はなぜか4本指なのだ。
まさか途中で生えてきたのか。デスピサロの出番は
もっとあとのはずだが。しかも指だけ生えるってスケール小さくね?
あ、わかったよ、きっとあれは、青いおにぎりを両手に
あ、わかったよ、きっとあれは、青いおにぎりを両手に
持ってるんだよ!なんて天然系美少女みたいなことは
言わないでほしい。(あなたが天然系美少女だったらその限りでない)
まさかファミコン版『ドラえもん』のヒゲの数的なメタな理由でもあるまい。
まさかファミコン版『ドラえもん』のヒゲの数的なメタな理由でもあるまい。
竜王のビジュアルについては他にも言いたいことが山ほどあるのだが
微妙な色の違いなど細かいことを言いだしたら逆転クオリア
みたいなややこしい話になってしまうので、そろそろまとめに入ろう。
つまり何が言いたいかというと、それは、あなたの身に起きた出来事を
描いたものでもなければ、他の誰かの出来事でもない。
要するに初代『ドラゴンクエスト』のパケ絵は誰にも起こらなかったということだ。
したがって、たとえ何百回、何千回と初代『ドラクエ』をプレイしたところで
したがって、たとえ何百回、何千回と初代『ドラクエ』をプレイしたところで
あなたの勇者が、このパケ絵のような状況を迎えることは絶対にないのである。
◆以下、蛇足◆
後世につたわった伝承図のようなものなのである。
少なくとも私はドラクエ世界の『1』が終わった時代に
勇者の伝承に触発された絵画職人が描いたものだと解釈している。
あるいは王室命令でお抱え絵師が描いたのかもしれない。
いずれにせよ後世の人間が描いたものなので
ディテールまでは再現できなかったのだ。